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本曲は三輪明神の神婚説話(「作者と出典」参照)や 天の岩戸伝説などをモチーフにした作品で、脇能、鬘物、 執心物の中間にあることから、中心をなす舞の名称をと って神楽物と呼ばれている。 もともと三輪明神(意富多々泥古命)は男神だが、そ れを「葛城」や「竜田」のように女神として扱い、恋心 に苛まれる女性ならではの、そこはかとした情緒を湛え る舞台に仕上げたところに本曲の真骨頂がある。 例えば、クセの部分には三輪明神の神婚説話が出てく るが、古事記などで一種の猟奇話として扱われているこ の話を、本曲では愛する男を慕う一途な女心の描写に仕 上げているのである。 したがって、見所も当然、クセ舞と神楽である。 クセ舞では苧環に糸を綴じ付ける型などにこの曲独特 の型があり、杉の下枝に男の実体(蛇)を見つける時の 感情の表現などもシテの技量が問われるところ。 一方、神楽は天の岩戸での神々の神遊びの様子を再現 するものであり、流派によっていくつかの小書(特殊演 出)がある。やはり長い舞の中で、いかに緩急をつけな がら神としての荘厳感を出し得るかがシテの技量だ。 素朴な雰囲気の中に、独特な味わいのある名曲といえ るだろう。 なお、作り物の杉宮に使用される杉は、三輪明神の神 木を表現するといわれている。 |